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電車で化粧

2012/11/15


019972m

いつもと同じ通勤電車の中。
車窓の向こう側では、夏の暑さを忘れられずに雪になり損ねた一頻りの雨も上がり、濡れた秋桜の緑が晩秋の陽射しを受けて淡く煌めいている。
乗車してすぐに車内の違和感に気づく。
車輌のほぼ中央で座席に腰かけている若い女性が、円盤状の物体(ファンデーションとか言うらしい)を頻りに覗き込んでいる。
独禁法で公取に捕まりそうな勢いで皆の注目を独り占めしているのだ。
化粧に熱中している彼女は、皆の視線など一向に介していないようである。
鼻の下を伸ばしたり、マスカラを塗るときは目を剥いたり、さかんにヘン顔(私にはどうしてもそのように見えた)をして、特殊メイクのような造作作業に余念がない。
決して届くことのない夢と、抗いきれない悲しい現実のはざ間で苦しんでいるようである。
私もなるべく視線を逸らしていたのだが、その面白さ、空前絶後、他の追随を許すものではない。
吹き出さないように必死に堪える。
こんな静かな所で笑ってはいけないと思うと、逆に耐え難いくらいおかしくなる。
飼っていた犬が死んだことを思いだして笑いを噛み殺す。
ふと周りに目をやると、近くに座っているサラリーマンも笑いを堪えて震えている。
貴様、罪もない通勤おじさん達を笑い殺す気なのか! えっ、そうなのか。そうなんだな。
あえてもう一度言っておこう。この惨劇は通勤電車の中での、ごく普通のOLが巻き起こした事件なのである。
こうして、永遠とも思えた阿鼻叫喚地獄のような時が過ぎ、通勤電車は静かに終着駅のホームへと滑り込んでいった。
化粧は自宅で済ませようね。

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